国公立大入試2次対策 英作文(和文英訳)攻略のコツ

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はじめに

あすか塾では2021年度国公立大学入試の2次試験対策(通称「2月特訓」)が始まりました。

これを機に、国公立大学入試に特徴的な英語の記述式問題、特に受験生にとって日ごろの自習での鍛錬が難しい英作文(和文英訳)について考えてみたいと思います。

(和文英訳ではなく自由英作文(テーマ英作文)については下の記事をご覧ください。)

和文英訳は何も国公立大学だけというわけではなく、関西の有名私大では同志社大学と関西学院大学でも出題されますね。

今日はたまたま神戸大学の問題を扱いましたので、これを題材にしてみます。

以下の文を英語に訳せというものでした。

日本社会は、自分の属するコミュニティないし集団の「ソト」の人との交流が少ないという点において先進諸国の中で際立っている。

広井良典 『コミュニティを問いなおす―つながり・都市・日本社会の未来』(ちくま新書、2009年)より
神戸大学入学試験 2015年度 英語 Ⅳ 問1
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主語を補う

国公立大学の2次試験で和文英訳の問題として課される日本語の文は、いかにも日本語らしい、こなれた表現であることがしばしばです。

「日本語らしい」表現の特徴の一つに、英語であれば必要なはずの要素が省略されていること、特に主語が省略されていることが挙げられます。

その対策として、英作文の参考書等で「問題の日本語を、やさしい日本語に置き換えてから英作しよう」というアドバイスを見かけることがあると思います。

ここでの「やさしい日本語」というのは「英語にしやすい日本語」ということですから、具体的には「主語・動詞(SV)が明確な文」を目指すべきでしょう。

そうやって作り直した文は、日本語としては不自然になるかもしれませんが、主語・述語の明確な、いわゆる「直訳調」であればあるほど、英作文の問題攻略には好ましいのです。

それでは、神戸大学の和文英訳問題をもう一度見てみましょう。

日本社会は、自分の属するコミュニティないし集団の「ソト」の人との交流が少ないという点において先進諸国の中で際立っている。

広井良典 『コミュニティを問いなおす―つながり・都市・日本社会の未来』(ちくま新書、2009年)より
神戸大学入学試験 2015年度 英語 Ⅳ 問1

上の問題は、そこまで「日本語らしい」表現ではなく、「という点において」や「際立っている」は英語でぱっと思いつくという受験生は多いでしょう。

その上で英作文に取り掛かるとして、まず主語を何にするか。
問題文のまま「日本社会は」を主語にしてみると、その述語は「際立っている」になるはずです。

これはこれで構わない。

ただそうすると、「自分の……交流が少ない」を英訳するにおいて、もう一つSVのある作文をすることになります。
ここが考えどころです。

ここで再度問題文に即した直訳を試みるなら、「交流が」が主語になるはず。
そこで”little communication exists …”とか”there is little communication …”とその通りに文を作ってみるのが一つの手。

もう一つの方が(対処法の幅を広げるという意味でも)おすすめです。
「交流が少ない」を「○○はあまり交流しない」と考えて、主語を新たに補ってやることです。

例えば”people don’t communicate very much”となるわけです。
こちらの方が好ましい理由は、文章で表現されている事象を、文型を変えて言い換えることにより整理して理解できることです。
また後で出てくる「自分の……」という表現を”their”で簡単に言い表せるようにもなります。

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解答例2つ

というわけで、まず正攻法の解答は以下のようになるでしょうか。

Japanese society is remarkable among developed countries in that there is little communication between people and those who are outside their community or group.

もっとかみ砕いて英訳すると次のようになるでしょう。

In Japanese society, people don’t communicate very much with others who don’t belong to their community or group. Because of this, Japanese society is unique in the more industrialized part of the world.

積極的に言い換える

上の2番目の解答は、もともと1文だった日本語の文を”Because of this”というつなぎを用いて2文の英語で訳していますが、意味を大きく変えなければこのくらいの操作はまったく問題ありません。

問題ないどころか、簡単な表現に落とし込むために、むしろ必要とあらばいつでも文の形を変えてやろうという意識を持ちましょう。

また、「『ソト』の」という、日本文の筆者が文体上の効果を狙って用いた表現ですが、英訳では無視します。
意味の本質と関係ない部分は切り捨てることです。

それではその「『ソト』の人」という表現を英語でどう言うかというと、「集団に属していない人」という意味の表現に変えています。

「交流が少ない」を「人々はあまり交流しない」と言い換えたのも同じ手法です。

このように、「○○である」という表現をどう言おうかと迷ったときには、「○○である」というのは「何でない」と言えるのか、を考えることが一つのテクニックになります。
否定表現を活用することで、言い換えを思いつくことが多くなります。

また、「先進国」が”developed countries”だというのは受験生なら知っていてしかるべきですが、そこは人間、忘れていることもある。
加えて”among”の用法の記憶があやふやだということもある。

その場合でもあきらめず、「先進国」を手持ちの語彙の中で何とか言い換えましょう。
上では”industrialized”をたまたま覚えていたという設定で、逃げ切りを図っています。

多少の減点はあるかもしれませんが、満点でなくても合格はできます。

なるべく自分の頭の引き出しに入っている、自信のある表現を用いて、最小限の減点で乗り切るのが受験英作文のコツです。

またそれに際して、「できるだけ語数を多く使ってやろう(直訳ではなく説明的に、かみ砕いて英訳しよう)」という意識があった方がいいと思います。

正解は無数にある

「この日本語に当たる英語をどこかで聞いたことあるけど、なんだっけ」となった場合、その表現が思い出せないとそこであきらめて(解答欄を空白のままにして)しまう受験生が多く見受けられますが、これはもったいない態度です。

英作文の正解は無限にあるので、「よーし、いろいろな解答を思いついてやるぞ」と思って気楽に望めば、どんな問題にも光が見えてくるものです。

そういう意味で英作文は、思われているほど困難なものではありません。

どうにだってなるのです。何とかしてやりましょう。

(冒頭でも紹介しましたが、テーマ英作文(自由英作文)攻略は以下の記事です。)

文責:あすか塾スタッフ I.