はじめに
センター試験英語(筆記)では、以下のようなポイントが重要です。
- 量が多くて時間不足になりがち
- 難関大学の2次試験よりもいくぶん容易な、学校教科書レベルの語彙
- トピック・センテンス(主題文)を中心としたパラグラフ構造
- 同意語句による言い換えを多用した選択肢作り
30年近くにわたるセンター試験の全年度の問題をくわしく見ると、傾向が見えてきます。
というのもあすか塾では、下の記事でも軽く触れましたが、センター試験英語筆記の過去20年分くらいの問題をひたすら解くという授業を行ってきました。
ここで用いられる語彙は一定レベル以下に限られているので、それに繰り返し接することで単語力の土台がしっかり固まるという効果があります。
また英語は何と言っても長文読解の量が重要なので、部活もやっていて時間のない高校生に効率よく長文に触れてもらうのも狙いです。
さすがに最近(センター試験直前の1月上旬)では生徒たちも慣れたもので、ついこの間2019年の本試験を本番と同じ80分の時間制限で解いてもらいましたが、時間オーバーする生徒は一人もいませんでした。
また得点も平均で8割前後取れていますので、本番も楽しみになりました。
【1月27日追記】センター試験本番(英語筆記)の結果が出ました(下の記事を参照)。
授業を行う講師の方も長年にわたって鍛えられ、今では予習もなしに80分の問題を90分で朗読・和訳・解説をこなすという早業も身につけました(早口すぎて生徒に通じているのか若干不安ですが……)。
そういうわけで、私もセンター試験英語にそれなりに通暁したと言えると思いますので(今年度で終了する試験の解説をこのタイミングで長々と披瀝してどうなるものかという気もしますが)、備忘録も兼ねて書いていきたいと思います。
来年度から始まる予定の大学入学共通テスト(新テスト)対策に何かしら通ずるものもあるでしょう。
第1問と第2問Aは後回し
いきなりですが、第1問(発音)と第2問A(文法・語法の4択)は後回しにしたほうがいいと思います。
これら最初の17問は考え込むだけ時間の無駄で、ぱっと見て解けるか解けないかしかないのに、試験の序盤に出くわすとつい考えこみがちになってしまいます。
しかし1問につき2点と配点が低いので、時間をかける意味はあまりありません。
雑に解いて、合計34点ある内の半分しか取れなかったとしても、残りを全問正解すれば全体で9割の得点率も達成できます。
従ってこれらは時間のない終盤に回す方が効率が良いと考えられます。
第2問B・C
というわけでまず第2問Bから取り掛かりましょう(これ以降は1問4点以上の配点になります)。
これは語順整序で、センター試験の語順整序は語数が5から6になってから少し簡単になったので、落としたくないところです。
語順整序の問題では文のSV構造の理解と基本的な熟語等の知識が2大ポイントになります。
私大のこの種の問題よりもやや難度の低い知識が問われますので確実に行きましょう。
第2問Cはチャンク(語のグループ)を並べ替えるという問題です。
これは第2問Bよりもかなり難しくなります。
文法語法の知識と文脈理解力の両方が必要になります。
文法語法の知識不足は仕方ありませんが、文脈を読み違えないように注意しましょう。
第3問
第3問Aはパラグラフ(段落)の中から余分な部分を取り除くという問題です。
一般に英語のパラグラフでは、始めの方にトピック・センテンス(主題文)と呼ばれるそのパラグラフ全体のテーマを述べる文が置いてあるのが標準的です。
センター試験はこのパラグラフ構造をかなり意識して作られていますので、この問題ではトピック・センテンスの内容をしっかり把握して、そこから話題がずれている文を優先的に選んで除外しましょう。
慣れればそう難しい問題ではないはずです。
第3問Bは会議などでの会話に見せかけてはいるものの、これもパラグラフ読み取りの問題です。
基本的に発言者の発言内容を司会者等が引き取ってまとめるのですが、要はパラグラフの要約問題と同じことです。
各発言者の発言がそのまま1パラグラフになっているので、最初の方にあるトピック・センテンスに気をつければ、発言内容のまとめとしてどの選択肢を選べば良いかを把握するのは簡単です。
ただ最近は、複数の発言者に共通した要素を答えるという少し傾向の変わった問題もありますので、注意しましょう。
第4問
第4問Aは実際の調査に基づいた文章とグラフ・図表を読み解いて答える問題です。
昔はこの形式の文章がもう少し長く、また問題数も多かったのですが、現在は4問しかありません。
文章と図表を素直に読み解いていけば決して難しい問題ではないので取り組みやすいと思います。
ただ2019年の本試験では少し傾向の変わった問題が出ています。
具体的には最後の問題ですが、これまで「この文章の次にパラグラフが続くとすればテーマはどういうものになるか」を問う問題だったのですが、最終段落の内容を問う素直な問題に変わっています。
一方2019年の追試験では従来どおり次に続くパラグラフの内容を予想させる問題だったので、2020年はいったいどちらになるのか興味深いところです。
【1月18日追記】2020年の英語筆記のこの問題では、「次に何が論じられるでしょう」という言い回しで、従来通りの作問となりました。ただし”following”というやや受験生を戸惑わせる単語ではなく”next”が使われて、比較的素直な答えやすい問題になったと言えるでしょう。
第4問Bはウェブページや広告チラシなどから情報を読み取る問題です。
比較的最近始まった、まだ新しい傾向の問題です。
設問にされている部分だけを素早く読み取って残りを捨てられればいいのですが、そう都合よくはいきません。
チラシなどの全体をざっと見てどんな情報がどこにあるか大まかにつかんでから、各設問を解くために該当部分を精読するようにしましょう。
第5問
第5問も時代とともに変遷してきました。
センター試験の最初期は短めのエッセイだったのですが、そこから二人の長めの対話に移り変わり、そこから二人の人物が同一の事件や映画を論評するという平易な文章の読解を経て、現在はかつての第6問のような物語文になっています。
普通の読解力があれば決して難しい問題ではありません。
さてここで、第5問に限らずセンター試験の作問の特徴として注意しておきますが、文中に出てきた単語はほぼ必ず別の単語に言い換えられて選択肢に使われています。
したがって、本文の単語がそのまま使われている選択肢は疑ってかかるというのがセンター試験のちょっとしたコツとなっています。
第6問
最後の第6問は第5問よりも内容が硬めのエッセイとなっています。
第6問Aでもこれまでと同じように、パラグラフの最初の方に出てくるトピックセンテンスを意識して読み、各パラグラフのトピックが何なのかを把握すると読みやすいでしょう。
トピック・センテンスに下線を引いておくと、第6問Bの、各段落の内容を1行ずつの表に要約するという問題は容易でしょう。
最後に第1問と第2問A
さて残しておいた第1問と第2問Aに戻りましょう。
第1問は発音問題です。
受験勉強に限っては、英語の発音を極めるくらいなら別の勉強をした方がいいと思うので、あまりこだわりたくないのですが、簡単な法則を知っていれば解けるような問題は解けた方がいいですよね。
したがって次のような強勢(アクセント)の法則は毎回反復して伝えています。
- -ial, -ian, -ic, -ion, -ious, -ityの1つ前の音節に強勢がある(例外:politic(s), television)。
- -ateの2つ前の音節に強勢がある。
他にも法則はいろいろあって、綴りと発音の関係などその都度授業で色々教えていますが、ここでは割愛します。
現在の大学受験では発音問題の重要度は低いので、あまりこだわらず半分くらい正解すればいいと割り切ってもいいのではないでしょうか。
日本の英語教育がそれでいいのかというのはまた別の問題です。
第2問A(文法・語法)にも同じような事が言えて、受験英語の文法・語法を完璧にマスターするなどということは端から望めません(現役生には特に)。
普通の高校生には当てずっぽうでしか解けないだろうという問題もしばしば含まれていますので、それらを極めるために『ネクステージ』と首っ引きになるなどという愚かなことはせずに、1問でも多く長文読解に取り組む方が賢い時間の使い方だと思います。
というわけで、第1問と第2問Aは後回しにして、最後の最後に時間との競争で解くくらいでもいいという心構えで臨みましょう。
(どうやら今年のあすか塾の生徒には時間不足の心配は無さそうですが、さてどうなることやら。)
まとめ
いかがだったでしょうか。
特に必勝法と言えるようなものではありませんでしたが、センター試験英語はよく出来た問題ですので、真っ当に語学に取り組めばそれだけ成果が上がると思います。
それでもコツのようなものと言えるのは、第5問のところで言ったように、正解の選択肢には本文中で使われていない単語が言い換えとして使われていることが多いということでしょうか。
ろくに英語を読めない人が本文中の単語をなんとなく拾っていっても正解できないようにするためでしょうが、やや単調な問題作りになることもあるので、つけこむ隙と言えるかもしれません。
いずれにせよアクシデントがなければ受験生たちがこれまで培ってきた英語力がかなり正確に反映された得点となるでしょう。
あすか塾の塾生に限らず、受験生の皆さんには是非実力を出し切っていただきたいと思います。
センター試験受験後は以下のページも参考にしてみてください。
文責:あすか塾スタッフ I.
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